ブルーハワイの余情


花火をする前の虫よけスプレーのにおいに咽せる。
火種がバケツの水に落ちる瞬間、身構えて息を止める。

200円を握りしめてかき氷屋さんを探した。
食べ終わった後のストローを噛んで、プラスチックを味わう。

ラジオ体操すら上手に見られたい。
でも、誰とも話さずに帰りたい。

紙粘土でなんでも作れる気がした。
貯金箱は最終的にペン立てになる。

扇風機の風量を意味もなく強にしたりリズム風にしたりする。
指先で羽をもてあそび、埃を拭い取る。

おばあちゃんが切ってくれた冷たいすいかを夢中でかじる。
果汁があごを伝うくすぐったさが不快だ。

寝なくても朝が来ることを初めて知った。
人の気配のないいつもの街は別世界のようだった。

下駄と素足の間に砂が入るのを心の中で気にしながら人混みを進む。
足が痛いなんて言えないくらい好きな人。

誰にも気づかれずに取っておいた、大事にしすぎて忘れかけていた、あの夏に抱いた感興、緊張と焦燥。
いつのまにか自分のものではなくなってしまった。

夏休みを返してください。
アルバムが燃え尽きる前に返してください。