きっと気の抜けた朝

遠くで救急車が鳴らす音を、特別気にするわけでもなくまるでBGMみたいに聞き流しながら、髪の毛の、先の白いのをハサミで切り落とした。なんとなく、自分の髪の毛ではないような気がして気持ちが悪かった。
パラ、と、重力のままにそれは落ちた。テーブルの上に広げた宅配ピザのチラシの上。
いつかは使うかもしれなかった割引のクーポン付きのチラシも、出来損ないの髪の毛も、雑に丸めれば燃えるゴミへと成り果てた。

また唇から血を出して、いつものように舌で舐めた。見えていなくても血の赤色が分かるのはなぜだろう。
聞いた話によると、インターネットにはピンク色の血がからだに流れている女の子がいるらしい。
黄金色のお酒もあれば青色のお酒もあるし、似たようなものなのだろう。

食べ物を食べる気にならなくて、炭酸飲料を飲んだが、後味に血の味が混ざって、不味いなと思った。

眠気の訪れを急かさなければならない。炭酸飲料とともに3粒飲み込んでは、まだ少しだけ寒い夜をさえぎるように、異常に重い布団を口元までかぶった。

昼にご飯を食べる頃でも、夜中の2時でも、3時でも、当たり前にサイレンは目的地へ急ぐ。