2016-01-01から1年間の記事一覧

夜の仕業

テレビのコマーシャルのセリフが耳に残って、そのとおり真似して話した。するとそれを知らない人にとっては私が突然虚言を弄したことになっていた。馬鹿にされたことへの怒りよりそれが私の本心だと思われたのが本当に気持ち悪かった。もうコマーシャルのセ…

白紙

実家に戻って家族と生活するようになった。時の流れは早いもので、生活拠点を移してからすでに1ヶ月が経過していた。1年半のうちに3回も住む場所が変わったことになるが、これからはずっとここに居続けてもいいという事実を実感し、改めて胸をなでおろした。…

0.2ルクス

溶けたチョコレートに指を突っ込んだような色の爪が、スマートフォンを操作するたびにちかちかと光を反射してうるさい。マニキュアを塗ってぶりっ子をしたけれど誰にも褒められなかった。でもそんな自分が今は少しだけ好きだ。自分で良いと思えなければ他人…

あの日のまま

なぜか振り込まれた15万円、こまごまとした買い物、腱鞘炎になるゲーム、むかし流行った映画のDVD鑑賞、馬鹿の悪口、そういうので暇つぶしをして過ごしていた。ウォークマンでTHE YELLOW MONKEYの曲を聴きながら。 東京に行くって言ったのは嘘になった。本当…

マメ

誰に言われなくても好きに生きてるひと。 好きに生きたいくせに他人からの評価にとらわれて生きにくいと嘆く馬鹿。本当に馬鹿。 ひとを思いやることができない奴を見て最低だなと思うけど、そういう奴に限って愛されるのはどういう理屈か。自分を犠牲にし相…

突然起きてクッキーを食べた。 たしか午前1時半頃に目が覚めてしまった。 スマートフォンの画面に細かい虫がたかっている。多分それは暗い部屋の中で唯一光を放っているからだ。虫の生態に詳しいわけでないからあくまで推測にすぎない。 クッキーはいつから…

きっと気の抜けた朝

遠くで救急車が鳴らす音を、特別気にするわけでもなくまるでBGMみたいに聞き流しながら、髪の毛の、先の白いのをハサミで切り落とした。なんとなく、自分の髪の毛ではないような気がして気持ちが悪かった。 パラ、と、重力のままにそれは落ちた。テーブルの…

眠りにつくまで

扇風機を押入れから出して、つけた 知らない間に夏だったのが怖くて、強がりで扇風機を出した 工夫してベッドの近くに置いた ホコリが溜まってるのに気づかないで電源を入れたから、ホコリは舞い上がった 布団に落ちた、あ、かわいそう 涼しい風、きもちいい…

ハムスター

風が強い。 窓が揺れるたびに大きな音がなる、心臓に悪い。何がそんなに気に食わなかったのか、凶暴な風は部屋の窓を叩き続けている。まるで怖い人たちが借金の取り立てに来ているかのような気持ちになった。当然経験はないが。 大きな音はとにかく苦手で、…

マクドナルドにて

時刻は16時を過ぎた頃。女子高生が化粧をしている。 学校が終わってあとは家に帰るだけではないかと疑問に思うが、海外のお菓子みたいに真っ赤な口紅をした彼女は、目を細めてアイラインを引いていた。 鏡に向かって2、3回瞬きをしてメイクの出来を確認して…

蝶にならない

枕元に置いたスマホのバイブレーションの音がして目が覚めた。アラームをかけた覚えはなく、眠りを妨げられた不快感を伴いながら画面を見た。 メールが一通。ずっと行っていないCD屋のメールマガジンだった。それを開くこともせず削除すると、異常に重い布団…

金のつぶつぶ

そばを茹でた。お昼ごはんにそばを食べようと思ったから。冷蔵庫の中はぎゅうぎゅうで、いつ食べたか忘れてしまった缶詰の開いたのとかもある。 さっき買ってきた紙パックのジュースをいれる場所がなかった。 めんつゆの瓶がふたつあった。片方は封が開いて…

仕事を休んだこと

2回目。 前回は風邪。嫌だったけど、時間に間に合うように化粧をして着替えて、電車に乗った。 家を出る直前に思い出し慌てて掴んだままでいた社員証。紐が絡まっていたのを取ろうとしたが、自分の顔写真が見たくなくて雑に鞄に突っ込んだ。夕方からの仕事の…