夜の仕業

テレビのコマーシャルのセリフが耳に残って、そのとおり真似して話した。するとそれを知らない人にとっては私が突然虚言を弄したことになっていた。馬鹿にされたことへの怒りよりそれが私の本心だと思われたのが本当に気持ち悪かった。もうコマーシャルのセリフを覚えても真似するのはやめようと思った。分からなくていい。関係ない。関係ないけど、人は真似が好きだと思う。

 

あれから少し考えた。ひとは変わるということ。考え方も好みも、容姿も変わっていく。「変わったね」と人に言うとき、そこに込められる意味はいつも同じとは限らない。価値のある変化なら微笑ましく思う。称揚することもある。一方、以前より落ちぶれたようであれば幻滅し、軽蔑の意味でそう言うこともあるのではないだろうか。または、これまでが幻に思えてしまうような変化、空虚感か。変わるということは必ずしも成長するということではない。できるだけ多く、誇れる変化をしていきたい。ひとりで生きているわけではないから。

泣いた日の次の朝。腫れたまぶたにアイシャドウを塗る。無価値で寂しい変化だった。