白紙

実家に戻って家族と生活するようになった。時の流れは早いもので、生活拠点を移してからすでに1ヶ月が経過していた。
1年半のうちに3回も住む場所が変わったことになるが、これからはずっとここに居続けてもいいという事実を実感し、改めて胸をなでおろした。もみくちゃにされながら揺られてきた満員電車内で、やっと席に座れたときのような安堵感があった。
1週間もしないうちに睡眠薬を服用しなくても入眠に30分と掛からなくなったのには驚いた。だんだんと正常な生活ができるようになってきているが、依然として無力で、気持ちばかり焦り、焦っているのに何もできないでいる。電車を降りた駅で迷子になり、これから向かうべき場所があるのに次に乗る電車が分からない。
地図をなくした。地図というのは確信のようなものだ。どこかで手に入るといいのだが。今はまだ、手ぶらで知らない土地を彷徨っている。

 

ずいぶん強気な言葉で得意気に綴られた日記を読み返してため息をついた。そのページを油性のペンでぐちゃぐちゃに塗りつぶし、力任せに引き裂いて灯油に浸し、そしてマッチを擦って火をつけた。頭の中で。
ずっと前に、「人の心が変わるのは悪いことなのか」と問われたのを思い出した。そのとき私は、「それは悪いことだよ」と答えた覚えがある。きっと本当は、人の心が変わるのは正しいことで、誰も責めることはできない事実なのだと思う。
削除、キャンセル。その二択は実に簡潔で環境にもやさしい。しかし、腹が立ってしかたがない。