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私はきっと正直ないい子で嫌われていた
プールに人の死体が浮かんでいた
5mの虫が赤い空を飛び回る
引き出しの中で猫が暴れていた
背中を開いて電池を抜いた
人を傷つけるのは必ずしも悪意じゃないと思った
偶然が重なって人に嫌われる
また失敗した
頬の穴から蒲公英が咲いた
公園に植えたマメが枯れた
止まった時計と1年間過ごした
6:30をさしたまま止まっている部屋の時計
1日に2回だけ本当のことを言う
川に車を停めてちょうど2時間寝た
夢を見たという夢を見た
手が震えてライターがつけられなかった
暗闇に色がついているわけじゃないのにそれは黒かった
駅が火事になった
電車も人も燃えていた
大人が大勢泣いていた
子供は悲しみ方を教わらなかったから泣かなかった
まっすぐ立てない
地面が溶けて邪魔をする
正しい人間はひとり残らず殺された
意図的な悪意で殺された
青い空はかつての人間の妄想
ただ赤い空が惨めな我々を笑いながら見下ろしている
轟音が笑い声みたいだった
行きも帰りも同じ親子とすれ違った
子供は無表情で母親の血液を浴びた
窓枠に雪が積もる
美しい顔が博物館に並ぶ
伸ばした髪で首を絞めた
新しい本が爆発的に売れた
全員で有難がった
嘘を言う人間は遠くに連れて行かれた
書いてあることはすべて信じなければならない
1頁から343頁まで白紙だった
344頁に「これはフィクションです」と書いてあった
傾いた家に暮らしている
鍵が折れた
隣人は帰ってこなくなった
私が15歳のときだった
瞼を閉じる
瞼の内側しか見えないはずなのに人が殴り合う光景が見える
昨日のキスを思い出す
カーテンは7年おきに開く
あれから1万1000年が経った
青い鳥が肩にとまった
そのあと青い鳥は絶滅した
溶岩を浴び続けて地球は変形した
私より1日早く生まれた友達が死んだ
ケーキ屋の自動ドアに挟まれた
今年もバースデーケーキが食べられなかった
海沿いの家は全部流された
悲劇を隠してメリーゴーランドは回り続ける
ボロブドゥール寺院、ランドルト環、玉蜀黍をかじる子供の映像が繰り返し上映された
男は電車に乗り合わせた女子学生を連れ去りレイプした
頭の上に恣意的な神
捨てられない空き缶を高く積み上げた
見惚れてしばらく動けなかった
ブルーハワイとさくらん
夏に食べた祈りのようなかき氷が忘れられない
小学校の卒業生名簿を開いた
よく猫が迷い込んだ
君になりたいと屋上から叫んだ
葡萄を潰して城の絵を描いた
綺麗なものはやがて壊れた
生まれた命は醜かった