ハムスター

風が強い。
窓が揺れるたびに大きな音がなる、心臓に悪い。何がそんなに気に食わなかったのか、凶暴な風は部屋の窓を叩き続けている。まるで怖い人たちが借金の取り立てに来ているかのような気持ちになった。当然経験はないが。
大きな音はとにかく苦手で、イヤホンで耳を塞ぎながらゲームをした。

と、パリンと音がした。まさかとは思ったが窓が割れていた。
床にガラスの破片が散らばり、これはどうしたものかと途方に暮れる中、それがキラキラとしていて綺麗だとも思った。
割れたガラスといっしょに、丸いなにかが床に転がっていた。最初、丸まった靴下かと思ったが、よく見るとそれはもぞもぞと動き、黒いビーズのような小さな2つの目でこちらを見つめた。ハムスターがいた。
なにか入れるものはないかと部屋の中を探すとき、素足にガラスが刺さったがその時は気が付かなかった。
畳んでおいたダンボールをもう一度箱型に組み立て、そこにハムスターをいれて飼うことにした。

ハムスターの名前を考えているうちに、眠気がきた。
なぜかいつもと違って目が赤いクマのぬいぐるみを抱きながら、昼寝をすることにした。


目が覚めると外は暗くなりはじめていて、向かいのマンションの廊下に灯りがつくのが見えた。
窓は割れていなかったし、ハムスターもいなかった。ダンボール箱は畳まれていた。
風は穏やかで、深い青色をした空に雲をゆるやかに泳がせている。

カーテンを閉めて、クマのぬいぐるみを撫でた。