星は見えないけれど

ひとの足跡がハートマークだったらいいのになと思った。地球がすぐに愛でいっぱいになる。深夜に散歩をしていた。誰もいない公園の滑り台のてっぺんにひとり座る。日中は4月とは思えないほどに気温が上がった。火照った遊具たちをそっと冷ますかのように、風が柔らかく吹き込んできた。髪の毛が顔にまとわりつくのが煩わしい。小さな街灯が私の背中を照らし、滑り台に影を落とす。それを見て、自分がコンパスの針に思えた。はたして私が指し示す方向は、進む方向は、正しいのだろうか。
4月21日も残すところあと3秒、2秒、1秒。スマホの画面を見つめながら、日付が変わっても私はしばらく動けないでいた。こうやって1日ずつ生きているけど、自分だけが次の日に行けないんじゃないかと怖くなることがある。というか、毎日怖い。みんなが自分とは違う時間の中で生きている気がする。スマホが鳴る。
YouTubeの通知が来て我に返った。はやく家に帰って配信を見よう。一瞬で意味不明なメンヘラ思考から抜け出しご機嫌になった私はVtuberのツイートにいいねを押す。数分で集まる3,000個のハートを見ながら家路につく私の足跡は、ハートマークだった。