日常

昼寝から目覚め、ベッドから降りて立ち上がったとき、身体の重さにびっくりした。まるでいつもと重力が違う世界のようだった。異常に肩がこっているのを感じる。あまりの重さに耐えかね、私は再びベッドに腰かけた。つけっぱなしのパソコンのディスプレイの…

感謝

4月11日生まれの人が2万人に誕生日を祝われるのを横目に見ながら、私はVtuberの耳の動きを凝視していた。ビールが飲みたいなあと思った。そして酢の水割りを飲む。Vtuberの女の子がハッピーバースデートゥーユーを歌いながら手拍子をする。パチンパチンと乾…

おはようございます

「どこ行くんだ~!?」Vtuberの叫び声を聞いて我に返る。画面の中で、うさぎの耳を生やした女の子がカクカクと不自然に動く。Vtuberのゲーム実況を見ながら缶チューハイを飲み、あたりめを齧る。最近の日課である。時刻は23時56分。まだ4月10日だった。書く…

いただきます

向かいのマンションの屋上には、なぜか象の模型が設置されている。おそらく原寸大だ。やけにリアルで、いつか動きだすんじゃないかと思うほどだ。きょうも窓から象を見ていた。手元のスマホの画面を見る。配達員が道に迷っている。象のいる屋上と配達員を交…

公園の花壇だけは守りたい

4月8日の天気予報は降水確率10%だったが、18時30分頃、私たちは一時的な雷雨に見舞われた。雨宿りがてら飛び込んだ居酒屋で、女性店員は「あと3杯飲んだら雨あがるよ」と言っていた。本当にそんな気がしたから不思議だ。私たちはチューハイと水の違いもわか…

いっそ私の口を縫い付けて、私の目をプラスチックにしてください。

ぬいぐるみ全員に等しく愛情を注ぎたい。いつも全員が目に入る位置に並べておきたい。全員を平等に撫でたい。最近この子あんまり触ってなかった、とかいうのに気づくと激しく自己嫌悪する。手が当たってしまったとか、たまたま蹴とばしてしまったとか、故意…

ようこそ

お届け日時を4月6日午前中に指定して注文した今治タオルは届かなかった。無音が痛い。昨日がなかったことになるのに、明日は来なかった。見知らぬ人に人違いで「いつも応援してます」と励まされた。電線のうしろで桜の木が揺れる。お祭りの屋台の射的の景品…

なかない猫

逆上がりをしてそのまんまさかさまの景色を眺めた先生の笑った顔が怒っているみたいだったこれでいいんだみんなが普通にできることを自分も普通にできるようになること普通を調べる定規はなんて恐ろしいんだろう 夏休み中逆上がりの練習に付き合ってくれたお…

メモ

冷凍したブロッコリー4月4日が消費期限の牛乳ブランドのショップバッグ書き損じた履歴書腐った花束編み物セット切れないカミソリ一度も読んでいない本マニキュアの小瓶お菓子の空き箱10年間使った財布

お姫様になりたい

全身鏡に映る部屋が妙に白々しく感じた。積み上げられた段ボールや服の山を、他人事のように眺めた。今まで、いろいろなものをよく見すぎていた。なにひとつ見落としてはいけないような気がしていた。取り返しのつかないことが起こる前に、何かが食い違って…

人って成長しなきゃいけないの?

きょうは知らない街に遊びに行く。2021年4月2日が金曜日でよかった。金曜日が大好きだから。久しぶりに出かけるので、浮かれて髪を巻いた。去年の自分と比べて成長したことといえば、髪の巻き方が上達したということくらいだ。時が経つのが早すぎて、生きる…

部屋とTシャツと私

9:35。静かな朝だった。寝巻のバンドTシャツ1枚だと、部屋の中でもまだひんやりとする。買ったばかりのティファールのポットでお湯を沸かす。この首元が伸びきったTシャツはなんだかんだでもう7年くらい着ている。Tシャツを買うためにライブの物販に並んで…

日本人の情緒

桜の開花期間の短さには毎年驚かされる。マフラーをしまうタイミングにはもう咲いている。コートをクリーニングに出すと同時に満開だ。とはいえまだ肌寒いんだけどなと思っていると、すでに散り始めている。いつお花見をすればいいんだ。毎年同じことを思っ…

仙台浪漫 第三章 抹茶ラテの緑

南さんと付き合うことになり、数々のデートをした。(南さんとのデートは、毎回思わず人に話したくなるような予想外の出来事が起こるのだが、その“数々のエピソード”はまた別の機会に紹介したいと思う。)それから早いもので4か月が経った。その日、学校帰り…

仙台浪漫 第二章 loftの階段

南さん。下の名前はなぜか教えてもらえなかったので苗字で呼んでいた。東北大学の工学部に通っているらしい。学年も歳も聞かなかったが、就活中だという話を聞いたのでおそらく22歳とか、そこら辺だったと思う。弾き語りを聴いていたとき、隣にいた南さんに…

仙台浪漫 第一章 アニメイトの袋

仙台を語るにあたって、駅前の“ペデストリアンデッキ”は欠かすことのできない存在だ。仙台駅西口に広がる大規模なデッキのことで、バスプール、タクシー乗り場、オフィスビル、商業施設、商店街のアーケードなどに直結する通路である。仙台の人間はペデスト…

みんなで手をつないで遊んでみたい

普通でいたかっただけだ、普通にやりすごしたい一心だったこの世にはどう考えても普通ではない人たちが多すぎるずっとそう思って生きてきたのに、気付いたら私は普通ではない側にいた 選択肢はぜんぶハズレだという感覚正解もある中からハズレを引き当ててし…

さよなら

「俺さ、これから高校の同窓会あるんだ。待ってられるよね?」「わかりました」「20時には抜けるから。じゃあまたあとで」 13時頃、蒲田駅で待ち合わせをして、ふたりで焼肉を食べた。きのうの夜、突然電話で「好きな食べ物ある?」なんて聞いてきたのは、ち…

供養

2019/07/16 19:11:33久しぶり、元気にしてた?あれからあっという間に3年が経った。こっちの生活にはもうすっかり慣れて………とかいう、定型文みたいな挨拶は置いといて。いや、でも実際、***最近どうしてるかなって気になってた。ブログ読んでるよ。最近更新…

99

私はきっと正直ないい子で嫌われていたプールに人の死体が浮かんでいた5mの虫が赤い空を飛び回る引き出しの中で猫が暴れていた背中を開いて電池を抜いた人を傷つけるのは必ずしも悪意じゃないと思った偶然が重なって人に嫌われるまた失敗した頬の穴から蒲公…

赤ちゃん

2018年10月の時点で、次の記事には創作小説を載せようと思っていた。絶対に面白い、私にしか書けないようなストーリーのアイデアが浮かんだのだ。それをどうにか形にしようと筆を走らせた。出だしは好調だった。書きたい思いと、それに応えるかのように湧き…

しかし彼は

彼はiPhoneを使っている。私はAndroidしか使ったことがないどころか、Apple製品をまったく使ったことがないのだけれど、彼がiPhoneを使っているところを愛おしいと思う。彼が持っているのがAndroidではだめなのだ、理由はうまく言えないけれど。きっとなにか…

やる気なし

新幹線で東京に向かっている途中、窓の外の知らない街をぼんやり眺めていた。数え切れないほどの(数える気になるものでもないが)家が建ち並んでいた。まったく意味不明だった。こんなにたくさんの人たちがこの世には存在していて、それぞれ何かしらの理由で…

平和なんだと思う

今すぐ死にたいというわけではないのだ。長生きをしたくない。この生活をあと50年とか、60年とか、続ける気がない。はっきりとしたゴールがどこにあるかもわからないのに、だらだらと続けていたくない。朝は午前5時30分には起きる。犬の毛をブラシで梳かし、…

そして「また明日」と言う

最近よく車で洋楽を流す。恥ずかし気もなく断言すべきことではないけれど、英語はもちろん分からない。でも洋楽は好きだ。何を言ってるのかわからないところがいい。単純に歌のメロディーとか演奏を聴いて、好きだとか嫌いだとか言えるから。邦楽ではそうは…

人間っていいな

風呂上がり、お気に入りのコロンを内腿に吹きかけてから、パジャマを拾い上げて身につける。パジャマをたたんだことがない。床か、あるいはベッドに、乱雑に落ちてる。私は一年中、襟のついた長袖の綿100%のパジャマを着て眠る。素肌(特に首周り)に綿の生地…

不幸で仕方ないよ

日々の生活の中で、“幸せな瞬間”というものを意識したことがあるだろうか。私はベッドで毛布にくるまるとき、言い表せない喜びを感じる。ふかふかな毛布に肌が触れる瞬間の、ちょっとひんやりするところも好きだ。体温で徐々にあたたまってくると、この上な…

姉妹関係

妹に本を買った。誕生日でもお祝いでもない。買い物のついでに本屋に寄って本を見ていたら、なんとなく、唐突に、妹が本を読んでいる姿が頭に浮かんだ。私は読書が好きだが、妹はとくにそういうわけではない。買ったのは、700円程度の文庫本。眼鏡をかけた女…

なら私はお前と過ごした日々は時間の無駄だったと死ぬまで言い続ける

雪が溶けたらたくさん遊びに行こう。買ったばかりの車を走らせて、遠くまでドライブするんだ。前にテレビでやってた喫茶店に行こう。ついでに海も見たい。やりたいことが多い。時間がいくらあっても足りない。まあ、その前に雪合戦でもしようか。そう思って…

葛西臨海水族園

夏になるとNさんのことを思い出す。Nさんと初めて会ったのは4年前の東京駅。ちょうど、東京メトロ丸ノ内線池袋方面の終電が発車した頃だった。NさんとはLINEのID交換掲示板で知り合い、やりとりをしているうちに会ってみようかということになった。私にとっ…